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対談 田中 亜紀 氏 × 水越 美奈 氏
~アニマルシェルターとボランティアの未来~

━━まだ一般の方が聞きなれない言葉、シェルターメディスン(以下S・M)とはなんですか?

田中
アメリカでも一般の方はまだ知らなく、この5~6年で獣医師の中で浸透してきた感じです。簡単な定義で言うと、動物保護施設に特化した獣医療や、伴侶動物の群管理というものです。
ボランティアより獣医師も含めた職員に意識として必要なものだと私は思います。
アメリカでは、全大学ではないですが、S・Mは獣医学教育の中に組み込まれています。日本では最近、特別な講義で教えるくらいで、教育の中にはカリキュラムとして入っていないですね。

━━ボランティアプログラムを行う際、運営側(シェルター)と参加者が最も心得ているべきことはなんでしょう?

田中
それはやっぱり、ボランティアの仕事はシェルター側が決めるということではないでしょうか。
水越
まず運営側が、なにをどこまでボランティアにお願いするかが明確になっていること。そして、その内容がきちんとボランティア側に伝わっていること。
明確に伝えることがボランティア教育だと思うんですね。それがあやふやだと不安やストレスにつながってしまう。
例えば、専門家にボランティアをお願いする場合もその専門性をどこまでお願いするかを運営側が明確にする必要があります。
アメリカのシェルターで、獣医師がボランティアとして携わる時に、治療のプロトコール(手順)はそこのシェルター、またはシェルターの獣医部門の責任者のやり方で行うのであって、自分の病院でのやり方をするということはあり得ないんです。
それは、運営側がきちんと決めていて、ボランティアはそこに従うということです。いわゆる契約っていう、最も日本人が苦手な部分かもしれません。
田中
すごいですよ。同意書、契約書、誓約書…。いっぱい契約書を書かされ、ボランティアするまでに1カ月かかるなんて普通ですよ。「役割に従えないなら、辞めさせられても文句は言いません」という契約書も書かされます。

━━確かに、日本人は気付いたからやりましたとか、こうしたらよかれと思ってやりましたとか…

水越
アメリカでは日本と違ってボランティアコーディネーターというのがほとんどの施設にいます。これはシェルターだけでなく動物介在療法であっても病院にいて、日本だと看護師さんが窓口になることが多いのですが、アメリカではボランティアコーディネーターという職域の人たちがやるんですね。
何か提案があった時なども相談して明確にしてもらえる窓口があるんです。
ボランティアコーディネーターに相談して、ボランティアコーディネーターは職員にそれを伝えて、どうするかを決める、指示・命令系統がはっきりしています。ボランティアのための窓口があることは、ボランティアの、安心感になり、だから(ボランティアが)楽しいと思えるのだと思います。
ワンクッションあるとお互いに言いたいことが言えるし、きちんと伝わりますしね。
田中
コーディネーターの人がボランティア教育セミナーのスケジュール管理や募集などもやっているんですよ。
水越
運営側はボランティアの人がたくさん来る時と集まらない時があるから、その調整もコーディネーターがやります。ボランティア側も自分の時間でできるのでストレスがないんですね。
そういうように、なにかあったら必ずこの人に聞くというような存在がある。例えば、何か不満があるという場合も窓口があるからはっきりしていますよね。
田中
そうですよね。大学などにも学部や学科のコーディネーターといったようにそういうポジションがあるんです。これは、ボランティアの世界だけじゃなくて、どこにでもその職域がありますね。
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